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フェレンク・マテ

■ワイン・スペクテーター ワインメーカー・トーク■
フェレンク・マテ

インタビュー2009年2月20月実施

 フェレンク・マテは1945年ハンガリーに生まれ、ブリティッシュ・コロンビアで育った、写真家、船乗り、ワイン生産者、そして『The Hills of Tuscany トスカーナの丘』(1999年)『A Vineyard in Tuscany トスカーナの畑」(2007年)の2つの自伝を含めた本の著者でもある。マテと芸術家兼ワインメーカーの妻はモンタルチーノ近くにある13世紀の修道院を修復し、住まいとしている。彼らのワイナリーであるマテ・ワインズはブルネッロ・ディ・モンタルチーノ、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、シラー、そしてサンジョヴェーゼのブレンドの5キュヴェを手がけている。ワイン・スペクテーターはヴェニス市内の夜の写真を撮るという彼を直撃した。


(WS=ワイン・スペクテーター記者 FM=フェレンク・マテ)

WS: どのようにワインに興味を持ち始めたのですか?
FM: ハンガリーでは習慣のようなもので、食事の際はワインを必ず飲みます。ワインはひどかった(ソヴィエト・ハンガリーという)けれど、いつもテーブルにありました。私が本当にワインを好きになったのは80年代初めのことです。その頃、私と妻のキャンディスはパリに住んでいました。毎週末ミシュランの赤いダイニング・ガイドを見ては安価なレストランと面白い旅行先を探し、緑の旅行ガイドで何か文化的なアトラクションはないかとブルゴーニュやロワールに向かいました。地元のレストランで食事をし、オーナーやシェフと話し、ワインについて質問をすると、私達がワインに精通していて何か特別なものを求めていると彼らは考え、ほこりをかぶった古いワインを探してくれるのです。
母の日のこと、あるレストランに行くと満席で入れませんでした。そこのオーナーの女性は残念そうに引き返す私達を見てかわいそうに思ったようで、私達をわざわざ引きとめて階段の隣にテーブルを用意してくれたのです。その日、人生最高のニュイ・サン・ジョルジュを味わいました。その気前のよさと親切心に触れたことが私のワインに対する情熱が芽吹いたときだと感じます。
WS: 「よし、ブドウを栽培してワインを造るぞ!」とはっきりと思った瞬間はありますか?
FM: ランチの後、まだ飲み足りない程度にハーフ・ボトルのワインを飲み終えて田舎を散歩していると、特にブルゴーニュのように丘に小さな畑のある風景はこの上なく美しく、ロマンティックに見えます。そしてワイナリーを訪ね、時にはセラーに案内されることもありました。足の下の砂がジャリっと音をたて、独特の香りと薄暗いセラーの中は禁欲的にも感じられ、太陽が照りつける畑とのコンビネーションは私の目には魅力的に映りました。

ある時、スウェーデンの本を調査し旅行までしたのですが、恐ろしく寒かったのでアマルフィ海岸に温まりに行きました。また北に戻る途中、オルヴィエートで途中下車。ワイナリーでのランチ後散歩していると教会の壁の前で足を止めたのです。そこでキャンデイスがつまらなそうにこう言いました。「これまで世界中を飛び回って、ボート生活も3年間経験したよね。そろそろ落ち着きたいな。家と庭と子供を持ちたい。」そこで私は「ここはどう?農場を手に入れて、君は絵を描き、僕は本を書くのは?」と言うと彼女は「農業のことなど何も知らないじゃない。」と言うので、私は「本を読むよ。」と答えました。すると「イタリア語、話せないよね?」と返してきたので、私は「習うよ。」と一言。でも彼女は「貴方、今どこにいるかさえ分かっていないわよね!」と言うので「誰かに聞くよ。」と答えました。

その後、風景も歴史も昔と変わらない土地ということでモンテプルチアーノとモンタルチーノの間に家を借りることになり、偶然にも世界で最上のワイン産地の一つで生活することになったのです。しかもその地はモンタルチーノの海岸側に位置しているので午後は海風が吹き、土壌は他の土地より粘土の少ない、最高に複雑なテロワールを備えていました。そして何と言ってもアンジェロ・ガヤが隣にやって来たことです。カトリック教徒にとって法王が隣に引っ越してくるくらいの衝撃ですよ。私はこのチャンスに彼の知識を盗まなければならないという衝動に駆られ、彼のワイン造りに関して知っている人を片端から呼び寄せたのです。

私は経験したことのない様々なことに出くわすことになりました。これは馬鹿に訪れた幸運です。それに忍耐力の賜物でもあったかな。私は自転車と足と車を駆使して4年かけてこの場所を探し出したのです。
WS: では今はモンタルチーノに根を生やしたのですね?
FM: はい、42,000の根がブドウ樹に!(と笑って)ワイン造りで素晴らしいことは、それらのブドウ樹の存在を絶対に忘れないことにあります。畑の世話をして発酵を開始し、夜中にピジャージュを行うのです。私の専門はポンプを使ってブルネッロの川をセラーの外の排水溝に流すことですが!とにかく楽しいです。畑やセラーで様々な仕事があるということは、いつもが勉強で醸造家とより良いワイン造りの話し合いをひっきりなしに持つこと。何かに熱中することがあれば、学ぶことで若さも保てます。

キャンデイスはマテのワインメーカーです。カルロ・コリーノから学びました。彼から学んだ最も大切なことは、偉大なワインは素晴らしいブドウからしか造られないということ。人の力が及ぶセラーでの作業は10〜15%ほどで、残りは最高の土地に最適のクローンを植えること等にかかっていると思います。それに集中すると、細かく注意深いベビーシッターのようになり、芸術家とマニアックな科学者の血が騒ぐのです。私は一度カルロにワイン造りの秘訣を聞いたことがあります。彼は「何百万もの工程があり、それぞれを完璧にこなさなくてはならない。そうすれば素晴らしいワインができるよ。」と言いました。つまり、出来上がりについて考えるのではなく、その日、その週にやるべきことをやるということです。
WS: 好きなワインメーカーは何方ですか?勿論ガヤも一人ですよね。
FM: はい。沢山畑を所有し、いつも飛び回っているけれど、彼はとても良い友人です。私はワインを造り手で判断することが多々あり、その人があまり面白い人でなければそのワインも好きにはなれません。これはワイン造りに真剣に関わっている人間に起こることで、その人の人格がワインに反映されてしまうのだと思います。ペットが飼い主に似るのと同じようなことです。
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